実際の導入例および論文のご紹介

「MBTIを自己認識のための社内共通言語に」
(大手電機メーカーA社 半導体事業グループ人事部部長)

出典:Japan-APT第1回大会プログラム(2005年刊)

 弊社では、2003年度から人材育成体系の大幅な見直しをおこない、本社による階層別育成体系などが整備されるとともに、各事業領域で、それぞれの環境にあわせた個別プログラムの開発がすすめられてまいりました。年間に新入社員・経験者あわせて100名以上が入社する半導体事業Gpでは、チームづくりに重点をおいたプログラム開発をすすめてまいりました。そして、チームづくりの基礎として、自己認識の向上が最も重要であると位置づけ、重点的に取り組んでいます。

1.自己認識向上の標準ツールとしてのMBTI

 これまでも、自己認識向上のためのプログラムは数多く導入されてきました。多くが交流分析を基本としたものですが、対象者によってはエニアグラムなど、他のセオリーを活用したプログラムも導入され、それぞれに効果をあげてまいりました。

 しかし、他企業の人材育成担当者との情報交換でも必ず出てくるのが「受講者の研修直後の反応はよいのだが、時間とともに忘れ去られてしまう」ということです。これはどのようなツール、セオリーでも共通することでした。この経時変化が一般的なイメージとなって、「自己認識向上は効果がない」「自己認識など会社でやっても意味がない」という意見が多く出され、自己認識向上プログラムを導入する際の最大の障壁となっていました。

 MBTIといえども、経時減衰をまぬがれるものではありませんが、基本構造が客観的でしっかり構築されており、タイプフィードバックの際に配布する入門さえ持っていれば、いつでも原理原則を確認できるということは、他にない特徴です。さらに、一度フィードバックを受けていれば、多少時間がたっていても、すぐに思い出し、更には新たな気づきまで期待できることも、これまでの社内の実践で明らかになっています。この結果、半導体事業Gpでは、MBTIを自己認識向上の標準ツールとして位置づけました。

2.上位層からの導入で一気に浸透

 半導体事業Gpでは、MBTIをまず部門長クラスから導入しました。いくつかの部を束ねる経営層に近いクラスからはじめることで、上位層からの浸透をはかることと、仕事においてたえずストレスにさらされ、ややもすると自分を見失いがちになる層であるという理由によるものですが、当初から大きな反響を呼びました。ほとんどの受講者が、パーソナルデベロップメントコースの中では、タイプ論の枠組みで自己理解していくことに抵抗感を示しながらも、コースの終了時にはその有益性を実感し、職場に戻ると「非常に素晴しかった」と周囲に話しています。この結果、指名でおこなった部長クラス以上のコースが非常に順調に実行できた上、希望する一般社員に向けてのショートコースでは、ウエブでの応募開始から20分で締め切りになることもしばしばあるほどの盛況ぶりとなっています。また、パーソナルディベロップメントを受講した部長から、自身の職場全員でショートコースを受講したいという要望が何件か寄せられました。その中から、最初にコースを実施した職場では、40名の部員全員が受講することになりました。 現在では、部長クラスはほぼ全員、さらにはその秘書の半数までもが、パーソナルデベロップメントコースを修了しており、延べ受講者数も200名以上になりました。また、上位職から一気に浸透させたことで、MBTIは社員の間に口コミで広がり、研修部門でとるアンケートで、今後実施してほしい講座として「MBTI」がしばしば登場するようになっています。

3.更なる浸透は社内認定ユーザー拡大で

 一方、短期間で社内にMBTIを普及すべく、人事担当中心に認定ユーザーの拡大もおこなっています。8月現在で15名の社内認定ユーザーが活躍しており、年内には半導体関連会社も含め、30名以上の認定ユーザーを養成することを目指しています。

 すでに15名の認定ユーザーによるショートコースもはじまり、一般社員層への拡大も急ピッチで進んでいます。ショートコースはわずか4時間ですが、受講者からの評判は良好で、多くの参加者から更なる理解を深めたいとの声が寄せられています。

4.MBTI応用コース

 早い時期に受講したマネジャー層からの、MBTIフォローアップコースの要望があり、さらにMBTIを応用したチームビルディングプログラムへの待望論も高まっています。これに応えるかたちで、MBTIコミュニケーション向上プログラムを人事によるトライアルバージョンとして実施いたしました。MBTIに精通した人事担当中心でおこなったにも関わらず、ほぼ全員がMBTIの認識を新たに出来たという意見で、MBTIの奥の深さがあらためて認識されました。

5.定期的なメンテコースの必要性

 先にあげた応用コースの拡充に加え、過去の修了者にたいする定期的なメンテプログラムが今後の課題として認識されています。ショートコースの改良による、1日バージョンの開発やパーソナルデベロップメントの新たなバージョンの模索など、アイデアはいろいろ出ています。 まずは、導入当初考えていたMBTIの3年間サイクルが完了する06年春にこれまでのレビユーをおこない、次の3年サイクルを計画し、より充実した体系構築を目指します。

日本におけるMBTIの導入事例

実際の導入例および論文のご紹介

トップにもどる